失われた未来を求めて

※ご注意:今回取り扱う作品は18禁のPCゲームとなっております。
18歳未満の方、もしくは性的描写に嫌悪感を抱かれる方は読み飛ばして下さい。
もちろん、この記事内容自体にはそういった表現は有りませんけれど
一応注意喚起をば。

「ところで」
「なんだ」
「最近帰ってくるなりずっとやっているそのゲームは、その、アレですよね」
「男性向け18禁PCゲームだが何か問題があるか?」
「私という女がいながら!」
「……特に問題ないじゃないか」
「で、なんという作品なのですか?」
「切り替え速いのがお前の長所だよな。唯一の」
「よく言われます」

《たった一つの未来を求めて》

「では、早速紹介をお願いします。まずはタイトルからで!」
「……」
「……あっ。その表情は、ちょっとした意地悪を思いついた時のじゃないですか!」
「……ジャンルは有り体に言えば恋愛シミュレーション。ノベルゲーム寄りだけどな。
 ストーリーはごく普通の学園モノだと思ってくれていい。一周目の終わりにひっくり返るけど。 
 また、舞台はとある学園。空の青がよく映える良い立地だ。その学園の天文学部が文化祭前に起こった様々な問題を解決しようと奮闘する、ってのが大筋。
 そして、古都ご所望のタイトルは『失われた未来を求めて』。11月26日に発売された作品だ」
「言うのを最後にするだけなんて、意地悪になりきれてない意地悪さんですね!
 う〜ん、変わったタイトルです」
「まあな。こういうゲームはタイトルで興味持ってもらうのも重要だろうから、そりゃ凝るさ」
「あらゆる作品にも言えることですよ、それ」
「うむ」
「『失われた未来を求めて』。まだまだ先にあるから『未来』なのに、 それが『失われ』てるというのは不思議な状態ですよ」
「そう。その不思議不可思議がこの作品の根幹を成す重要な要素だ」
「端的に言うと?」
「端的に言うと、面白みがなくなる」
「そんな、ズルイですよ」
「ま、そういった感想はクリアしてからだ」
「今はどこまで進めたのですか?」
「言わば最終章まで、だ」
「へえ。では早いうちににクリアしちゃってくださいよ。次は私がやります」
「さっき問題が云々と言っていたのはどこのどいつだったか……」

《洗練された原画と音楽》
「この作品で特筆すべきは、なんと言っても原画・キャラクターデザインだ。
 深崎暮人さんと黒谷忍さんというコンビが担当されている。ゲームの原画担当はこの作品が2作目、だったはず。
 前作『水平線まで何マイル?』の際は深崎さんが原画、黒谷さんがSD原画と衣装、だっけな。
 ともかく至極綺麗な絵なんだ。まあ見てくれれば分かると思うが」
「どれどれ……。ふむ。まあヒロインさんたちはみんな、私に負けず劣らずかわいいですね!」
「どの口が言うか……」
「えへへ。うん? タイトルロゴが可愛いなあ」
「そこに目を付けるとはさすが俺の見込んだ女だ!」
「……見込まれた覚えはありませんよ、微塵も
「なんだかお前、今日はやけに冷たいな。
 タイトルロゴはTomoyuki“tats”Arimaさんというデザイナーさんが担当されている。この人のデザインしたCDは何枚もあるんだが、どれもカッコイイんだなこれが!」
「テンション上がりすぎですよ……押さえて押さえて。あ、音楽もなかなかですね」
「ああ。キラキラしてるところとシリアスなシーンの強弱がまたいい。
 そして何と言ってもヴォーカル付きのオープニング・エンディング・挿入歌だ。
 特にオープニングの『∞未来』は聴くたびにゾクゾク来る。そして各シーンで流れるインストアレンジヴァージョンもまたイかすんだ」
「『ヴォーカル付き』って言い方に京君の変な音楽の趣味が出てますね」
「そうでもない。現代の多様化した音楽環境におい……」
「はいはい、分かりましたから次どうぞ」
「……むう」

《表情あふれるキャラクターたち》
「次はキャラクター紹介と洒落こみましょうか」
「うむ。今回はストーリーの核心的なところには触れないように気をつけていくぞ。
 まず、メインヒロインと呼んでいいだろう『佐々木佳織』だ。栗毛色のショートヘアが似合う幼なじみキャラクター。
 明るくて気配りもよく効くナイスガール。ちなみに主人公とは物語開始時点で一緒の家に住んでる」
「なんと。まるで出来レースですね」
「いや、この子のシナリオは『あまりにも近すぎる仲がゆえ踏み出せないもどかしさ』に焦点を当てたものとなっている。よって、ルートさえ違えば他のヒロインにも十分芽があるんだなこれが」
「ふむう。妹みたいな間柄というやつですか」
「どっちかって言うと姉かな。
 次。幼なじみの天文学部会長、支倉愛理。青みがかかった瞳と長い黒髪、それから鋭い必殺キックが持ち味の鮮烈な女の子だ」
「必殺キック、ですか……。そんな子を攻略するなんて、主人公さんは無事に済むんですか」
「案外大丈夫だ。主人公以外にも蹴られ役は何人もいるしな」
「それは……どうなんでしょう」
「ともかく3人目、知的かつ気品にあふれ、ものすごく毒舌な先輩、華宮凪沙。
 口は悪いが容姿端麗。口は悪いけどな。ぐさりと来る言葉を連発する。攻略ルートではかなり可愛かった。というかおそらくエロ担当だ。エンディング後のエロさがすごかった」
「いや、そんなに強調されても」
「それから4人目のヒロイン。物語のキーとなる少女、古川ゆいだ。
 ミステリアスでぽやーとした人物。長い髪とちょこんと乗せた帽子がトレードマーク。ミステリアスと言っても『何を考えているのかわからない』、いわゆる寡黙なキャラクターじゃあない。聞けば何でも素直に応えてくれるピュアな女性だ」
「物語のキー、とは意味深な言い方ですね」
「彼女が未来を変えるんだよ」
「?」
「……っと、なんでもない。
 次はヒロイン以外の天文学会員、長船・KENNY・英太郎、通称ケニーだ。
 アメリカからの留学生でがっしりとした頼れるナイスガイだが、お茶目でかなり頭が悪い。必殺キックをかまされたり毒舌でボロボロにされたりするのは彼の担当だ」
「男性キャラですか。ひっどい扱いですねそれは」
「ケニーにはそういうことをされるのが好きな節もあったりする。また、ともすると主人公のハーレム世界になってしまいそうな設定においては良いスパイスの役目を果たしてくれている。
 俺も『うわあ、もうこんな甘甘空間見てられんわ!』となりそうな時、何度山口勝平声の彼に救われたことか」
「京君なんかのために、ケニーさん身体張りすぎですよね」
「プレイヤーみんなのために張ってるんだよ、彼は。
 最後。主人公の秋山奏だ。
 特異性に富むキャラクターだらけの天文学会の中、特に特徴も得意なこともないのに、なんとなく溶け込んでいる人物。
 結構なポテンシャルを秘めていたりするが、それはまた未来のお話だ」
「それだけですか?」
「これだけ」
「主人公なのに?」
「主人公だからこそ、多くを語ることはイカンのだよ、古都君」
「君付けは気持ち悪いのでやめてください」
「……すみませんでした」

《それから、シナリオ》
「問題はシナリオだ」
「どんな問題が?」
「その、だな。随分仕上がった感はありありと受ける。たまにうむう、と思うこともあるが、その辺は既に上げた良さで十分補っている。また、18禁ゲームの宿命たる少しばかり強引なエロシーンへの導入も、まあ仕方ないと言えるだろう。
 問題はその筋だ」
「と、言いますと」
「このゲームそのものの構造は『一つのお話、それから各ヒロインのアナザーEND』となっている。つまり、全ヒロインの通常ENDは『とある意味で繋がって』おり、そして最も重要なことに、悲劇だ」
「悲劇。私はあんまり好きじゃないですね」
「俺もだ。だが『おそらくは』最終的にはハッピーエンドで終わるはずだ。先輩ルートでその方向性が強く示されてるしな。
 要するに問題は『俺自身まだすべてのエンディングを見てはいないから、シナリオに関しては言及できない』ってことさ」
「……怠慢ですね」
「誰の?」
「誰のでも」


 お久しぶりですガダジです。ご無沙汰しておりましたのは多忙が原因、ではなく誰かさんが言っているように私の怠慢が原因であります。
 今回このような形式の記事としましたのは、後日「ネタバレ感想」としてまた一つ『失われた未来を求めて』に関する記事を書こうと考えてのことです。ご容赦下さい。
 また、これまでに紹介してきた書籍と違い、このゲームは9000円台とかなり高価です。私程度が紹介したところでどうにもならないのですが、どうにも気に入ってしまい、こういった記事を書くこととしました。いい作品ですので、ぜひお手に取ってみて下さい。
 今後は週一くらいのペースで更新出来れば、と考えております。どうか、気が向いたときにでもお越し下さいませ。
 

「そこに、すべての始まりと、終わりがあるんです」
(『失われた未来を求めて作中登場人物、古川ゆいのセリフより引用)


TRUMPL『失われた未来を求めて』公式サイト

∞未来

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